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続きまして、アトピー性皮膚炎治療薬のデュピクセント®その②です。
>> コラム「アトピー性皮膚炎治療薬のデュピクセント その①」はこちら
アトピー性皮膚炎の治療の軌跡
《治療効果はどのくらいの期間でみられ、その目安をどのようにみていくか》
前回のコラムではデュピクセントを使用した患者さんでは最重症の患者さんにもほぼ全例で効果がみられるとお伝えしました。これは本当です。ですが、デュピクセント®を使った患者さんがすべて同じ経過をたどるわけではありません。
その理由にはおおきく4つに分けられます。
1.患者さんごとにデュピクセント®を始めたときの重症度がことなる
→→ 当然重症の方のほうが、時間がかかります
2.アトピーの患者さんには紅斑、丘疹、痒疹(ようしん)、苔癬化(たいせんか)などのさまざまな皮疹が混ざっていることが多いが、どの湿疹がメインなのかは患者さんごとにことなる
→→ 痒疹や苔癬化のような固い湿疹病変は少し時間がかかります
3.体のどのパーツの症状が一番悪いかどうかが患者さんごとにことなる
→→ 下腿を含む四肢は一番最後によくなる傾向があります、顔、首は湿疹のタイプにもよりますが汗やストレスなど突発的な悪化因子の受けやすく効きづらい傾向があります
4.デュピクセント®を始めたあともしっかりステロイドの外用を併用したかどうか
→→ 痒みが改善してついつい忘れてしまう方が結構いらっしゃいますが、当然併用したほうが早くよくなります、症状をみてステロイドのランクや頻度を相談していきます
治療効果をどのように、何でみるか❔については、主に次の3つの尺度を治療開始前と3か月毎くらいに記録していきます。患者さんご自身のご希望によっては採血等を省略する場合もありますが、ちゃんと記録したほうが患者さんも治療する側も治療効果を定量的に共有できます。
1.皮疹の症状を皮疹の重症度のスコアリング方法EASI(イージ)スコアをつける、写真等で症状を記録することもあります
2.TARC(ターク)値を採血で測定する
3.IgE(アイジーイー)抗体価を採血で測定する
EASIスコアは高いほど重症なのですが、下の円グラフは、
デュピクセント®を開始して16週間後に、EASIスコアが何%下がった(達成した)かどうか❔というデータです。
これをみると、16週間後にはもともとの症状の半分程に改善した方は全体の8割、1/4程にまで改善した方は全体の7割ということになります。当院での使用患者さんもほぼ同じデータになっております。
株式会社サノフィより提供資料
次に、TARC値は高いほど重症で、現在の皮膚の状態をよく反映する数値です。正常値は450以下とされるTARC値ですが、下の折れ線グラフのように、
治療開始12週の時点でスタート時にかなり高値(=重症)の方でも97%の方が正常値になっています。
つまり、ここまでの2つの尺度からは「赤く炎症を起こして、痒い湿疹はおおよそ3,4か月で落ち着いてくる」と言えます。
アトピー性皮膚炎病診連携講演会、清村講演スライドを改変
※個人情報の観点から個人の数値は削除しています
しかし、前述のように、治療開始3,4か月の段階では痒疹や苔癬化のような固い湿疹病変は、改善はみられるが残存している場合が多く、また一見湿疹がないように見える皮膚も皮膚の中ではまだ炎症がくすぶっている場合がほとんどです。
一旦下がり切ってしまったTARC値はこの先は変動が少ないので、4か月以降の症状の変化(治療効果)を確認する方法としては、定期的に、皮疹の重症度を示すEASIスコアつける、治療前と比較してどのランクでどのくらいの量のステロイド外用剤をつかって今の状況なのかを患者さんに確認する、下記のグラフのようにゆっくりと改善を示すIgE抗体価を測定していきます。
IgE抗体価というのは、そのひとにとってアレルゲンとなる物質に対してそれぞれ作られる抗体の総和です。簡単にいうと、どの程度のアレルギーの体質を持っているかの指標になります。皮膚の状態が悪いと、皮膚からそのアレルゲンが侵入して高くなります、また状態が悪い期間が長いほど、どんどんアレルゲンが皮膚から侵入して数値が高くなるので、その人がどのくらいの期間皮膚の状態が悪かったかの指標にもなります。
アトピー性皮膚炎病診連携講演会、清村講演スライドを改変
※個人情報の観点から個人の数値は削除しています
ずいぶんと長い解説になってしまいましたが、すこし難しかったでしょうか。
外来でもお気軽にご質問されてください。
日本経済新聞6月8日夕刊でもデユピクセント®について簡単に紹介されています
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キーワード:アトピー性皮膚炎の新薬、デュピクセント、かゆみ、生物製剤、バイオ製剤、ステロイド外用、EASIスコア、TARC、IgE抗体、清村咲子