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尋常性乾癬もそうですが、アトピー性皮膚炎の治療はここ数年で大きく変わってきました。
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新薬が実際に患者さんに投与されるまでには実に長い道のりがあります。『ここに作用すれは効果がでるのではないか?』という沢山の仮説のもとに沢山の基礎的な研究がなされた上で、その後、いくつかの治験を通して実際の患者さんへの安全性と効果が実証できたものだけが、実際の診療に使用できるようになります。当然、基礎的な研究ではよい結果がでたけれど、治験では効果が認められなかった、ので実用化されなかった薬も沢山あるわけです。
今回は、生物学的製剤であるデュピクセント®、分子標的型薬剤であるオルミエント®は『どこのポイントに治療薬が効いているのか?』をざっくりと解説します。
その前に、アトピー性皮膚炎の病態は以下の3つのポイントが大切です。
◆ 乾燥肌の体質を持っている
◆ Th2タイプの炎症を起こしやすい体質を持っている≒様々に刺激に反応しやすい体質を持っている
◆ かゆみを感じやすい体質をもっている
ここでいう体質は、遺伝的にもった体質のことを指し、ひとりひとりの特徴です。後天的に環境の影響を受けて皮膚の症状の出方が変わる方はもちろんいるわけですが、多くの方はこの生まれもった体質に左右されます。アトピー性皮膚炎の遺伝子レベルのことも沢山分かっては来ているもののまだ完全には解明されていません。
以下のイラストのように、皮膚の外側から刺激が加わると、Th2細胞を中心とした炎症が次々と連鎖的に起こります。最近では、Th2細胞のみではなく、様々な免疫細胞の関与が明らかになっています。
もうすこし、詳しく見ていきましょう。
JAKとはヤヌスキナーゼ(Janus Kinase)の略語で、JAKはアトピー性皮膚炎以外にも関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わる細胞内分子です。
下記の図のように炎症性サイトカインが免疫細胞の表面にあるサイトカイン受容体に結合すると、JAKにATPが結合し、JAKによって細胞核へシグナルの伝達が行われ、炎症性サイトカインが産生されます。
この炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わる経路がJAK経路(JAKPathway:ジャックパスウェイ)です。
◆ デュピクセント®は、
IL-4受容体複合体に結合し、IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える、生物学的製剤です。
◆ オルミエント®は、
JAK1/2の阻害薬であり、JAKのATP結合部位に結合することでATPがJAKに結合するのを阻害し、炎症性サイトカインのシグナル伝達をシャットダウンさせるのです。そうすることで、過剰な炎症性サイトカインを抑えることができます。
このように、アトピー性皮膚炎は細胞、分子、遺伝子レベルでの研究が進んだからこそ、このようにピンポイントで効くような新薬が出てきたことが分かります。また、こういった薬の安全性や副作用を考えるときは、逆に、その薬の効くポイントはアトピー性皮膚炎以外で、体のどこで、どんな疾患で、どんな状況でどんな役割や作用をしているのか?を考える必要があります。アトピー性皮膚炎ではそのポイントをブロックすることで効果があるとしても、仮にそのポイントが生命にとって非常に大切な役割をしていたとしたら、それをブロックしてしまったら非常に有害になりえるからです。もちろん、薬物の代謝経路も関係します。
このように、たくさんの研究費用がかかった新薬は高額であることが難点でもありますが、アトピー性皮膚炎の寛解維持(症状は非常に軽微かない状態)が期待できる薬が登場したことは患者さんにとって希望になりますね。
非常に難しい内容になってきてしまいましたが、たまにはこのような投稿も役に立つのではないかと思いましたので、ぜひ参考にされてください。
先日はアトピー性皮膚炎の新薬のオルミエント®の講演会にファシリテーターとして参加させていただきました。『どのようなアトピー性皮膚炎の患者さんにオルミエント®が適しているのか?』とか、『デュピクセント®との使い分けは?』など講演会場では議論が白熱しました。今後数年で、オルミエント®同様のJAK阻害剤やバイオ製剤など、新薬が続々登場する予定となっているようですので、アトピー性皮膚炎の今後の展望が楽しみです。また同時に、医療提供者は、適正かつ安全に薬を使い分けていく責務がありますので、知識をアップデートして診療にあたりたいと思います。
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