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慢性に経過するアトピー性皮膚炎との付き合い方~アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021はここが変わった~|南越谷駅徒歩1分の皮膚科・美容皮膚科|咲皮ふ科クリニック

慢性に経過するアトピー性皮膚炎との付き合い方~アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021はここが変わった~

いつも沢山の患者様にご来院いただきありがとうございます。同時に外来の混雑により、通院していただいている皆様には長い待ち時間となってしまう状況が多く申し訳ございません。

冬期になり、落ち着いていたアトピー性皮膚炎の症状も乾燥により悪くなってくる時期です。ひどく悪化してしまう前にご相談ください。落ち着いていた症状が悪化すると『やっぱりアトピー性皮膚炎は結局治らないのだ😞』とがっかりしてしまう患者さんも多いかと思います。今回は先日改定された『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』に触れながら、『どうして悪くなったりよくなったりを繰り返すのか?』『どうしたら症状が安定するのか?』に関係するアトピー性皮膚炎の治療との付き合い方のコツをまとめます。

ただ、これは実はアトピー性皮膚炎の治療に限ったことではありません。『慢性に経過するすべての皮膚疾患』、例えば『尋常性ざ瘡=にきび』『慢性蕁麻疹』『尋常性乾癬』『手湿疹』などに共通する考え方になりますので是非参考にされてください。(「え、にきびも?」と思われる方もいるかと思いますが、にきびもです。にきびはまた別の機会にまとめまたいと思います。)

◆ 見た目は正常だけど炎症のある状態=『潜在的な炎症』というとらえ方

一定期間治療をしていただくと一部の重症の患者さんを除き、一旦見た目上の皮疹はかなり改善します。あるいは赤かったりつぶつぶがあるところと、一見何もないように見える部分があるかと思います。アトピー性皮膚炎の患者さんはそういった見た目の皮疹はゼロの部分にも軽い炎症や皮膚バリア機能の低下がみられることが分かっています。このような状態を『潜在的な炎症』と言い、この状態もしっかり抑え込むことが長い目でみると、後にひどく悪化したりすることなく経過が良好に保てます。

◆ 長期的にいい状態を保つ秘訣は『プロアクティブ療法』

とはいっても、症状がひどかった時と同じ治療(通院頻度、外用頻度、ステロイド外用剤のランク、内服薬の種類や量)を継続し続ける必要はありません。ステロイドの外用薬であればランクを下げたり頻度を下げる(週に2回など)、内服薬は必要なものだけに絞る、紫外線療法であれば間隔をあける、などすることが可能ですので通院頻度も間隔をあけることができます。このように、悪化を未然に防ぐような治療の考え方を『プロアクティブ療法』と言います。このようなプロアクティブ療法を継続して行っていくと、もう一段安定した状態になります。一方、仕方のないことでもあるのですが、症状が目に見えて悪化してから治療する(=リアクティブ療法と言います)、を繰り返している場合はこの潜在的な炎症が抑えきれていないので、なかなか安定しません、通院すること自体が患者さんにとってはとてもご負担だとは思うのですが、、良くなってもお薬はいつも手元にあるようにしておくと安心ですね。

◆ アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021にデュピクセント®と経口JAK阻害剤、コレクチム軟膏が追加

長期的な安全性と効果が確認されたことにより、中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんにデュピクセント®と経口JAK阻害剤(オルミエント®※今回のガイドライン改定では後から承認されたリンヴォック®サイバインコ®は入っていません。)が追加されました。両薬剤にはそれぞれ特徴がございますが、いずれも非常に高い効果があり、患者さんのQOLの向上に直結します。また長期的な効果や安全性がすでに十分に確認できているデユピクセント®に関しては寛解維持療法(=良い状態をキープすること)の選択肢にも入りました。当院でもデュピクセント®は累計70名程(2021年11月末現在)の患者さんにご使用いただいておりますが、非常に良い状態を長くキープ(=長期寛解維持)されている方が多いです。また、外用療法ではコレクチム®軟膏が選択肢の一つとして入りました。ただ、新薬はいずれも高額な薬剤ですので経済面で迷われる患者さんが多いのも事実です。しかし、『まだまだ治療の選択肢がある』それだけでもアトピー性皮膚炎の患者さんの希望になるのではないかと思います。アトピー性皮膚炎の治療は現在では様々な選択肢の中から治療することが可能です。お気軽にご相談ください。

 

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