コラム
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皮膚疾患には日本皮膚科学会が作成したガイドラインがあるものとないものがありますが、残念ながらあざ、多くのしみ、肝斑と言った色素病変にはガイドラインがありません。また、一部のあざ治療を除いて保険適応もありません。診断基準や治療方法は確立されたものがないため、「しみに効く!」「肝斑に効く!」と言った機械やレーザー、ドクタースコスメを含むスキンケア商品があふれており、多くの患者様が間違った情報で間違った治療を続けてしまうことも多いように思います。最近では皮膚科領域の学会以外にも皮膚科や美容皮膚科、形成外科の先生方が症例を検証する勉強会が活発化してきており、一定のエビデンスのある治療方法が広まってきたように思います。
今回はそんな肝斑に治療に活躍するであろうニードルRF(高周波)のシルファームXの導入を目前に、30代後半~50代の多くの女性が悩む「肝斑」について基本的な知識を簡単に解説します(^▽^)/
1. 肝斑の分類や診断
(※1.2.私見.)
典型的で視診でもわかるようないわゆる①~③の特長を有する肝斑を狭義の肝斑とすることが多いです。
①後天性の顔面色素斑で頬骨部・前額部・口唇などにほぼ左右対称に現れる。
②褐色でびまん性もしくは網目状、病変の境界は不明瞭か下縁など一部明瞭な場合がある。
③臨床的に鑑別疾患としてはADM(後天性メラノサイトーシス)、色素沈着、多発性の老人性色素斑・脂漏性角化症(SK)などを除外する必要がある。合併している場合もある。
※1:葛西健一郎.シミの治療. 文光堂, 2015. ※2:黄聖琥. カスタマイズ治療で読み解く美容皮膚科診療. 全日本病院出版会, 2022.
一方で臨床的に一番多いパターンは境界明瞭な老人性色素斑や脂漏性角化症に境界不明瞭な色素沈着が頬を中心とする広範囲に不規則に散在している広義の肝斑です。
色素沈着の原因は様々ですが、慢性的な摩擦、レーザーや各種美容施術、アトピー性皮膚炎やざ瘡などの慢性炎症性疾患、スキンケアやメイク用品の化学物質などによる炎症後の色素沈着です。
2. 肝斑の悪化因子と病態
肝斑の悪化因子として、紫外線(特にUVB)、物理的な摩擦や刺激、妊娠や更年期など女性ホルモンなどは良く知られています。紫外線は色素を産生するメラノサイトを刺激し、色素を増強し、過剰な刺激や摩擦は皮膚が薄くなりバリア機能障害をもたらします。
長期の紫外線(特にUVA)による暴露では真皮内の弾性線維変性(solor elastosis)、コラーゲン変性、および拡張し増殖した皮膚血管などの特徴的病理所見を呈しておりこれを光老化と呼びます。肉眼的には小じわの増加やハリ弾力の低下をきたします。
肝斑の患者様では光老化のはっきりしない症例でも、弾性線維変性、真皮の血管増生と拡張、真皮へのメラノサイトの突出と基底膜の破壊が病理学的にみられることが分かっています。
3. 肝斑の治療はメラノサイトの活動性を抑える保存的治療と真皮を再構築する肌育治療がポイント☝
いわゆる老人性色素斑(日光性色素斑)ではメラニンを含有した異常角化細胞をレーザーや光治療なで破壊することが治療のメインになりますが、
肝斑の治療は、①-1メラノサイトの活動性を抑える保存的治療、①-2真皮を再構築する治療、②延長したターンオーバーを正常化しメラニンを排出する治療、③異常毛細血管を抑える治療に分けられます。
なにがどのように効くのかはまた別の機会として、以下のようにまとめられます。
このように、肝斑治療は短期間で治るものではなく、ホームケアと症状に応じたデバイス治療でこつこつ改善させていくものであることが分かりますね!
①-1メラノサイトの活動性を抑える保存的治療: トラネキサム酸内服、エレクトロポレーション(メソナJ)、イオン導入(フォレーゼ)、擦らないメイクとスキンケア、紫外線防御
①-2真皮を再構築する治療: パルス型ニードルRF(シルファームXなど)、肌育治療各種(ジャルプロシリーズ、スネコス、プルリアルシリーズ、プロファイロ、ジュベルックなど)
②延長したターンオーバーを正常化しメラニンを排出する治療: ピコトーニング、ビタミンA(レチノール、トレチノイン)でのスキンケア
③異常毛細血管を抑える治療: Vビーム、ニードルRF(シルファームXなど)